•  No.20 2008新年のご挨拶

建築と社会の関係

昨年末、景気の話題で上がったのがアメリカのサブプライムローンと改正建築基準法の施行による新築住宅着工件数の急減です。日米同時に建築を取り巻く社会が、景気に大きく影響を及ぼしたことになります。
 
日本では、国内総生産の1割が建築関連という中で、今回の建築確認による影響は、この国内総生産を大きく左右するほどの社会問題にまで発展したことになります。
 
この問題は、2年前の構造計画書偽装事件に端を発した一連の対応策の一つですが、一般紙などにもたびたび掲載されることとなり、食品問題の偽装事件と同様、国民の大きな関心を得ることとなりました。
 
その後、食品問題は食の安全に対しても国民の関心を高めることとなり、それぞれの企業に於いては対応の差で異なる経過を辿ることになりました。建築の問題は、社会的には経済に影響を及ぼしましたが、私達設計者にとっては、社会的位置づけが確立し、消費者の設計に対する関心が高まったのではないでしょうか。
 
怪我の功名・上原 伸一
 
 
人 建築 まち を継ぐもの

本年はいよいよ京都議定書の第一約束期間に入る。Co2問題に限って云えば待ったなし、行動開始が余儀なくされる。前号で石油ピークについて触れたが、現代における大量の化石燃料に依存する農業の産物(食)のピークが2004年に迎えていたと云う研究者からの発表があった。 ミシュランの格付けどころではない。
 
さて、建築生産の現場でエネルギーを考える指標にEPRと云う有難い研究成果を得た。 EPRはEnergy Profit Ratioの略で、エネルギー利益率、エネルギー収支比を数値で示す考えです。
 
得られるエネルギー(出力)÷生み出すためにかかるエネルギー(入力)。 例えばその数値が”1”では意味がない、研究者が示すボーダラインは”5”です。 これまで太陽光発電は”2”くらいでしたが新素材による改善で”6”を超えるものが出てきている、ちなみに風力発電は”3.9”、 昨年高騰したトウモロコシによるバイオエタノール”1.3”、石油火力発電”7.9”、水力発電”15.3”、原子力発電”17.4”。
 
53の手習い・白井 勇
 
 
エネルギー収支率(EPR)で考える

建築の設計では、いくつかの要件が決まらないと実際の設計はできない。 当たり前ですが。その要件は、敷地、用途、収容人数、工期、場所に合ったデザイン等さまざまである。今までは、この条件をすべて満足するか、ほぼ満足すれば”良い建物”として評価された。
 
使い勝手をヒヤリングするが、それは多くは管理者に対してである。楽しんだり、学んだり、居住したりする側の人の立場に立っていないケースがほとんどで、人の営みがデザインされていない。想定されていない事をどうやって取り入れていけるかが、必要ではないだろうか?
 
この答えの方向に、シーン(場面)を想定した提案が必要だと考える。付加的な要素の見つけ方、本当にほしい物や、事の見つけ方を通して、思い浮かぶシーンを形にすることが出来れば、より親しみのある建物やまちが出来る。こんな思いで「有馬・野川地区生涯学習拠点の設計」、「きらら@アートしんゆり2007のイベント」はその実践。